知っておきたいタイルの基礎情報
デジタル計測器を使った精密な色管理、膨大な過去データをもとにした調合、職人の経験による補正など、美しい色合いや豊かな質感のタイルを作り出すために、「リボーンタイル(加藤化学工業所)」では独自の色合わせ技術を駆使しています。
「市販のタイルではもの足りない」というお客さまにもご納得いただける品質を生み出すための、リボーンタイルの釉薬や顔料へのこだわりをご紹介しましょう。
タイルの色合わせのステップ
正確な計測と膨大なデータから生まれる納得の調色
当社では分光計、色差計、グロス計といった計測器を使い、色、光沢などの評価や補正をデータ化し、数値化された色を読みとる技術と職人の勘をバランスよく融合させて、よりオリジナルに近づける調色作業を行っています。
調色について
ツヤと色を決定するのは精密な機器計測と実測データ
ツヤを合わせる
補修タイルの調色は、まずは釉薬や塗料の「ツヤの度合い」を決めるところから始まります。下記の「光源による色ずれ」の項目でもご説明しますが、これはツヤの強弱が色味に大きな影響を与えるためです。この光沢の調整にはグロス計(ツヤを計る機器)を使います。
釉薬のツヤの強弱はアルミナやシリカといった成分の配合で変わります。これに対し塗料のツヤはフラットベースやクリアーの配合で調整しています。
色を合わせる
ツヤと質感を決定したら、次に細かく色を合わせていきます。当社では色味の調整には色差計や分光計(色を計る機器)を使い、正確な数値を出します。算出された色差データの数値をもとに修正を重ねて、限りなく同じ色に近づけていきます。
ここで使用されるのが色差計で色を数値にした過去のデータです。
ΔL=明度 -(濃い)⇔(薄い)+
Δa=-(緑)⇔(赤紫)+
Δb=-(青、青紫)⇔(黄、黄赤)+
ΔC=彩度 -(くすんだ)⇔(あざやか)+
ΔE=総合評価 +-はなくて数値が小さいほどよく似ている
まずおおざっぱに作ってみた色と、データ上の色とを色差計で計り、どの数値がどれだけ違うのかを確認します。たとえば
ΔL=+1.5
Δa=+0.4
Δb=-0.3
ΔC=+0.2
ΔE= 1.6
という計測値が出た場合、作った色では「色味が薄く、紫ぎみで、あざやかすぎる」ということがわかります。そこでその数値の逆の、「濃く、黄緑でくすんだ」色になるように修正していけばいいということになります。
このように、色差計やグロス計の数値がわかれば誰でもイメージ通りの色を作ることができます。しかし、それで本当にオリジナルに近づけるかというと、そうとも言い切れないのです。色の見え方は背景や見る角度、太陽光と蛍光灯など光源の違い、タイルの質感によっても微妙に変わってしまうためです。繊細な調整にはやはり職人の経験や勘が必要になります。
光源による色ずれについて
色は光によって変化する、ツヤは調色の大事なポイントです
色味を合わせる作業において「光源」は重要な要素です。同じ色のタイルでも、ツヤの有り無し、自然光と蛍光灯など、光の温度差によって見え方が異なるためです。
下の画像をご覧ください。左右どちらも同じ色ですが、左がツヤあり、右がツヤ無し(マットタイプ)です。そして日向の自然光で撮影したものと室内で撮影したものとを比較してみました。色の違いがよくおわかりになるかと思います。
室外(自然光)で撮影 | 室内(蛍光灯)で撮影 |
自然光で見ると、右のツヤ無しの方がやや濃い目に見えます。ところが、室内では左のツヤありの方が濃く見えます。これは光の反射具合によって色味が違って見えるという例です。このように光源によって物の色の見え方が変わる性質を「色の演色性」といいます。
「マットタイプの色味と同じものをツヤありで作って欲しい」というご依頼は多いのですが、色の演色性の問題もあり、すべての光源下でまったく同じ色味を再現することは困難です。できる限り近いものを再現できるよう努力しておりますが、ご依頼時には使用するタイルがどのような光源下で、どのような場所であるかをくわしくご指定いただけるとより精度が高まります。
補修・改修用タイルの調色コストについて
限られた条件の中でベストに近い調色をこころがけています
ほとんどのメーカーが「サンプル無料」をうたう中、当社はあえてサンプルは「1現場2色まで」という制限を設けています。なぜなら、再サンプルに対応しても、最終的には初回のサンプルで承認されることがほとんどだからです。
サンプル段階での色ずれは、焼成する窯の温度管理や釉薬の成分比率の違い、擬石の大きさや色の違い、少ない量で試作釉薬を作るための計量のずれといった原因から起こります。いずれも解決策はありますが、コストが大きくかかるのが問題です。
色を合わせるだけでなく、「色を見る」ことにも専門の技術や知識が必要です。素人目で判別できる色ずれは、当然プロの目には認識されているのです。それでも提出されたサンプルに色ずれがあった場合、ほとんどが技術的にやむをえないケースか、あるいは荷口やコストを考慮したうえで「あえて選択されたもの」なのです。
こうした事情をご説明すると、お客さまにもどこで妥協するかをご理解いただけます。しかし、中間業者にはこうした根拠のある説明はできません。そのため、ひたすら試作を無料でくりかえさなければならない、というのが、現場でよくあるトラブルの実情です。
当社では直接お客さまからご依頼をいただく形で「何を活かし、どこを妥協するか」を直接ご相談させていただいております。直接のご依頼だからこそ、ご注文時にお客さまのご意向も理解しやすく、試作前のご提案もしやすくなります。
100%のレプリカは作れる?
完璧をめざすためにはコストがかかります
既存タイルと完全に同じレプリカを作ることができるか? というと、これはほぼ不可能だといわざるをえません。あえて挑戦するとすれば、純度の高い高価な原材料を使用し、計器や成形プレスといった機器類も高精度のものを使用し、温度や湿度の空調管理を完璧に整えた工場で……と、大変コストのかかる条件が必要になります。
たとえば原料の純度が80%であれば¥50/1kgですが、95%であれば¥500/1kg、99%となると¥5,000/1kgとなります。色合わせも同じことで、100%を求めれば求めるほどコストがかかってしまうのは、当然といえば当然のことです。
完成度が80%程度でよい方もいらっしゃれば、100%に近づけたいという方もいらっしゃいます。100%に近い完成度を求められる場合は、テストにかかる費用をその都度いただくのが理想ですが、コストをかけずに限られた条件の中で、より効率よく、より100%に近いものを作ることが当社の技術です。
陶磁器用の釉薬はタイルに不向き?
織部や鉄砂、光沢トルコ、陶磁器の釉薬で独特のタイルにチャレンジすることも
織部・鉄砂・黄瀬戸・油滴・天目・なまこなど、当社では陶磁器用の釉薬も多数取り扱っています。時に「個性的なオリジナルタイルが欲しいので陶磁器用釉薬で作って欲しい」といったご要望をいただくケースがあります。
しかし、陶磁器用釉薬にはタイルに不向きなものがあります。決してタイル生地と相性が悪いというわけではありませんが、窯の温度や雰囲気・質量などに色や面が左右されるなど、いくつかタイルには不向きな要素があるのです。
陶磁器用釉薬がタイルに不向きである主な理由
- ジルコンや顔料をあまり使用していないため、焼けや施釉による色むらやツヤむらが生じる可能性が高い
- 色むらやツヤむらを修正しづらい
- コストがかかる(Zn、Co、Ti、などを使用するケースが多い)
- 仕上がりが不安定なため決定色となる見本が作成できない
- 流動性が高いため、たまりができてしまうなど役物(端部やコーナー部分などに使用する特殊形状)に不向き
- 耐薬品性に弱いものがある
- 何十年か後に再補修が必要になった場合、同じものが作れない可能性が高い
上記のようなリスクをご理解いただいたうえで、ご要望がありましたら作成することは可能です。